礼法教育の研究(第2報):小学校用礼法教科書の内容の推移. 開隆堂 わたしたちの家庭科; 家庭502 ... (学習指導要領との対照表,配当授業時数表) ... ※発行者の 番号・略称 ※教科書の 記号・番号 ※教 科 書 名 9 開隆堂. 小学校家庭科5 : 改訂版. (1983). 開隆堂出版54〜55ページより, そして,平成14年発行の教科書(開隆堂出版『小学校わたしたちの家庭科5・6年』)では現在の教科書と同じように料理のレシピが掲載されているページより前にお茶のいれ方が紹介されていますが,ガスコンロを用いてお湯を沸かす方法の応用例という位置づけも今と同じです。, このように,お茶をいれることの位置づけは戦後の家庭科教科書のなかで変化してきており,平成14年の教科書にはすでに現在に近い扱いがみられることがわかります。, 昭和36年度の教科書をみると,お茶をいれる方法は調理実習の主役というよりは,応接のマナーを学ぶ章で副次的に扱われているにすぎません。それもそのはず,戦前の学校教育ではお茶のいれ方に関連する内容は修身や礼法の教科書にあったのです。, 図5 修身科の教科書におけるお茶(1941) ヨイコドモ 上. (1960). 東京書籍.10〜11ページより, 一方,開隆堂出版『小学校 わたしたちの家庭科 5・6』ではどうでしょうか。調理実習は「ゆで卵」「青菜をゆでる」からスタートするという位置づけのようですが(12〜13ページ),その直前の8〜11ページには調理実習の準備について書かれていて「湯のわかし方」の記載があります(図2)。ここでは扱いは小さいものの急須で日本茶をいれる方法についても写真とともに紹介されています。, 図2 教科書にみるお茶のいれ方② (2014)小学校 わたしたちの家庭科 5. (1983). 〔119600648〕, 斎藤健次郎他19名. * ごみ処理にはさまざまな課題があることが理解でき、子どもの考えを広げることが出来ます。, * 児童がどのような取組ができるのか、3Rの実践例を具体的に調べることが出来ます。, * 子どもが調べたいと思うさまざまな製品のリサイクルについて詳しく調べることが出来ます。, 【自分が筆箱を買うとすれば、どのような筆箱を選ぶだろうか。選ぶ理由を話し合ってみよう。また、下の例を見ながら、買い物の手順を考えてみよう。】, これまでの5年生の家庭科では、どのような学習をしてきましたか。ふり返ってみましょう。, * 「やってみよう」では、クイズ等を通して、楽しみながら3Rについての知識を学ぶことができます。, * 「リサイクルできるごみ」のページではどうして、リサイクルしないといけないのか、リサイクル「しない」場合と「する」場合で比較をさせることが出来ます。, 【学習課題】これまでに学んだことを生かして、やってみたいことや、もっと調べたいことにちょうせんしてみましょう。, 【学習課題】共に生きるために自分ができることは何だろう。下のわくの中に書いてみよう。, * 「3Rすごろく」のページでは、児童がこれまで学んできたことを振り返ったり、まとめたりするためのすごろくの作成方法を紹介しています。さらに、作成したものを「みんなの作品」ページで掲載できます。. 日本家庭科教育学会誌, 26(2), pp. 小学校 わたしたちの家庭科 5・ 開隆堂出版. https://doi.org/10.11549/jjahee.26.2_13, 江口敦子・住田昌二. 小学校家庭科教科書の採択状況を調査したviii(表 1)。先述したとおり、小学校家庭科の教科書とし ては現在、開隆堂と東京書籍の2社のみからの出 版で、平成29年度用では開隆堂は“わたしたちの 家庭科⑤⑥”、東京書籍は“新編 新しい家庭⑤⑥” である。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1277310, 礼法教育研究会. 帝国教育会出版部. 帝国教育会出版部.22〜23ページより, また同じく昭和16年発行の国民学校初等科5年生(現在の小学校5年生)向けの礼法に関する書物(礼法教育研究会『国民礼法』)をみると,「第十一 茶菓」では「茶の進め方,飲み方」が文章と挿絵で解説されています(図6)。お茶のいれ方そのものについては触れられていませんが,これらの修身や礼法の教科書のお茶にまつわる記述が戦後の家庭科教科書に影響を与えたことは間違いないでしょう。, なお,来客にお茶をすすめる際の作法については戦時中だけでなく明治期からほとんどの礼法の教科書に記されていることですが,昭和16年は文部省が礼儀作法のマニュアルである「礼法要項」を制定し,礼法教育が修身科の一部として明文化された年でもあります。このような戦時下の礼法重視の機運の残り香が戦後の教科書から感じられるのは私だけではないはずです。, 話を元に戻しましょう。現在の家庭科の教科書では,お茶のいれ方を実習する主な目的は来客をもてなすことではなく調理実習の準備としてガスコンロの使用方法を確認することでした。, とはいえ,お茶は私たちの生活にあまりにもありふれすぎていて,初回とはいってもお茶をいれるのが調理実習のメインでは子供たちは退屈するのではないかと思う方も多いかもしれません。しかし実際には,お茶をいれたことがない,急須の使い方がわからないという子供たちも多くいるのです。, 図7 お茶をいれることが「できる」と回答した割合 ※文献11)の調査結果をもとに筆者作成, 弘前大学の日景弥生氏による研究は,中学生と大学生について小学校の教科書に掲載されている色々な調理器具の使い方を知っているか,料理ができると思っているかどうかを調べたものです。調査対象者は弘前市とその近隣の居住者に限定されていて,かつ無作為抽出したものでもないため結果をただちに一般化することは難しいですが,調理技能に対する自己評価がどのように変化しているのかを調査結果から推し量ることができます。, 調査項目の一つに「緑茶の入れ方」があり,1989年と2007年で小学校卒業直後の中学校1年生(1989年は卒業直前の小学校6年生)と大学生のそれぞれに対し「緑茶を入れる」ことができると思うかどうかを尋ねています。, 調査結果をみてみましょう(図7)。中学校1年生では,1989年に「緑茶の入れ方」が「できる」と答えたのは男子96.1%,女子95.4%と,ほとんどの生徒が肯定的な自己評価をしています。しかし2007年では,男子68.8%,女子77.0%と減少しています。大学生はというと,1989年の調査では男子は92.1%,女子は90.0%が「できる」と回答しています。一方で,2007年の調査では男子は59.6%,そして女子は87.6%となっています。大学生の男女差が気になるところですが,いずれにせよ1989年から2007年にかけてお茶をいれることができると回答した者の割合は中学生でも大学生でも急激に減っているようです。, この調査は小学校で家庭科を学んだ「後」の調査ですから,家庭科を学ぶ「前」の実態についてははっきりとはわかりませんが,初めて家庭科の調理実習に臨む小学校5年生にとって,急須でお茶をいれるということは決して当たり前のことではなく,むしろ物珍しい体験である可能性すらあるということです。実際,私が担当している高校生の調理実習でも,慣れた手つきでお茶をいれる生徒がいる反面,おそるおそる急須を手にする生徒を多くみかけます。平成も終わろうとしているいま,同じ調査をしたならば果たしてどのくらいの子供が「できる」と回答するでしょうか。, 「お茶をする」という慣用句がありますが,初めて急須を目にする子供にとっても家庭でいつもお茶をいれている子供にとっても,調理実習でクラスメイトとともにお茶をいれて飲むことは,楽しいひとときになります。お茶をいれるのに適切な温度を知ることは科学と料理の関係を学ぶ入り口にもなりますし,日本の伝統文化に触れることもできます。お茶は発展性の豊かな教材といえるでしょう。しかし,お茶をいれるという行為が私たちの生活から消えゆくならば,歴史ある「お茶のいれ方」の実習が他の内容に取って代わられるのは,そう遠くない未来のことかもしれません。, 注:過去の教科書など歴史資料から引用する場合,原則として旧字体は新字体に,旧仮名遣いは新仮名遣いに改めています。, (〔〕内は公益財団法人教科書研究センター附属教科書図書館・教科書目録情報データベースhttp://textbook-rc-lib.net/Opac/search.htmの目録レコード番号). 〔120140242〕, 内野紀子・鳴海多恵子・石井克枝他33名. 礼法教育の研究(第1報):小学校における礼法の成立過程. 渡邊彩子他13名. 〔119880341〕, 文部省. 編修上特に意を用いた点や特色 . 調理に関する知識や技能の定着における高等学校家庭科男女必修の影響:男女必修以前と必修後約20年経過時点での調査結果の比較を通して. 新編 新しい家庭 5・ 東京書籍. (2013). (2014). コドモノシツケ 国民礼法. 23–34. 家庭科という教科は,衣食住,家族,消費と環境など生活のあらゆる側面と関連する教科です。このコラムでは,人々の生活の移ろいに伴って刻々と変わりゆく家庭科教育の姿を制度や歴史を踏まえてお伝えしていきたいと思います。