家庭医学館 - 子どもの鼠径ヘルニア(脱腸)の用語解説 - 泣いたとき鼠径部がふくれる[どんな病気か] 内臓が鼠径部(股(また)のつけ根)の弱い部分から脱出し、陰嚢(いんのう)や大陰唇(だいいんしん)にやわらかい腫瘤(しゅりゅう)(腫(は)れもの)が現われる病気です。 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 株式会社 主婦の友社 『最新 赤ちゃん・子ども病気百科 0-6才』pp.138-139. 小4になる息子のことで相談です。1歳半のときに陰嚢水腫と診断され、様子をみましょう、ということになりました。3歳の健診のときは何も言われませんでした。たまたま、膨らんでいなかったときだったからみたいです。できれば手術を避け こそだてハック, 2018年3月26日 こそだてハック, 2018年7月12日 鼠径ヘルニアは、一般には脱腸と呼ばれています。股の付け根の少し上あたり(鼠径部)から陰部にかけて腸が脱出して膨隆したり引っ込んだりする疾患です。子供の1~5%くらいの頻度でみられるので比較的よくある疾患です。 こそだてハック©ever sense, Inc. All Rights Reserved. 娘は私たち夫婦にとって初めての子で、転勤族のわが家には近所に頼る実家や親戚もいない状況だったので、毎日のように夫と二人で育児に奮闘していました。 小児鼠径ヘルニアの場合、足の付け根や、男の子だと陰嚢に膨らみが見られるのが特徴です。指で押すと引っ込むくらいであれば、それほど心配はいりませんが、ヘルニア嵌屯を起こしてしまうと手術が必要となるので、違和感があれば念のため病院を受診しましょう。 株式会社 主婦の友社 『最新 赤ちゃん・子ども病気百科 0-6才』pp.138-139, 2018年7月13日 日本小児外科学会「鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸,だっちょう)」, ※2 小児外科の中で一番患者数が多いといわれる鼠径(そけい)ヘルニアは、腸などの内臓が元ある位置を越えて外側にはみ出てしまう疾患です。小児の鼠径ヘルニアは生まれつき(発生学的)の原因で起こるため、膨らんだ部分を手で押し戻すことで、脱出していた臓器を元の位置に戻すことができます。ところが症状が進行し病状が悪化すると、脱出した臓器が戻らなくなり、痛みや腫れを伴う嵌頓(かんとん)を引き起こすことがあります。脱腸がみられるだけであれば緊急の治療は不要ですが、万が一嵌頓を発症した場合は手術治療が適応となります。嵌頓は1歳以下の乳児に起こりやすいため、親御さんが子どもの様子をよく観察することが大事です。今回は小児鼠径ヘルニアの原因・症状・診断・治療法について、名古屋大学小児外科 教授の内田広夫先生にお話しいただきます。, 鼠径ヘルニアは、腸などの内臓の一部が本来あるべき位置を越えて皮膚の下に飛び出てしまう疾患で、脱腸とも呼ばれます。小児外科を受診される患者さんの中で一番多い疾患といわれ、子どもの約30人に1人は鼠径ヘルニアを発症するとされています。, 外鼠径ヘルニアとは、お腹のなかから内鼠経輪というところを通って腸が出てきてしまう病態です。一方内鼠径ヘルニアは、内鼠経輪を経由せずに腸が飛び出てきます。, 胎児期には、お腹の中から陰部に達する腹膜鞘状突起(腹部の内側を覆っている腹膜の一部が突起状に伸びたもの)というトンネルが存在します。腹膜鞘状突起の付近には、男児であれば精巣血管や精管、女児であれば子宮を支える靭帯が通っています。男児の場合、精巣はまず腎臓の下に発生します。そこから腹膜鞘状突起を引き伸ばすような形でゆっくりと降下し、満期ごろにようやく陰嚢まで到達します。, 通常であれば陰嚢の降下後、腹膜鞘状突起も産まれる前に自然と閉鎖されます。しかし、何らかの原因で腹膜鞘状突起が出生前に閉じられず、出生後も残ってしまうことがあります。この状態が鼠経ヘルニアです。鼠径部に穴が開いているので、腸や卵巣がこの部分に飛び出したり戻ったりしてしまいます。, 鼠経ヘルニアは、男児女児同様にみられます。また、鼠径ヘルニアを発症するほど腹膜鞘状突起は大きく開いていないものの、根元が閉じておらず腹水が通る程度のトンネルが残っている場合は、男児で陰嚢水腫(陰嚢に水が溜まる病気で、多くは片方だけで起こる)や精索水腫、女児でヌック管水腫を発症する恐れがあります。, 陰嚢水腫や精索水腫は腹膜鞘状突起に水が出入りする疾患で、早朝には水腫が小さく夜間に大きくなるという特徴を持ちます。, 前項で述べた通り、小児鼠径ヘルニアは発生学的な要因によって発症するため、生じたトンネルを閉じるだけで治療できます。一方、大人の鼠経ヘルニアは、加齢に伴う筋肉の低下が原因で生じます。そのため鼠径部を閉じるだけでは再発してしまいます。大人の鼠径ヘルニアの場合は、弱くなった筋肉を補強しなければなりません。, 鼠径ヘルニアの最も特徴的な症状は「鼠径部の膨れ」です。脱腸しているだけであればその他の症状はなく、手で押すことで簡単に元に戻ります。, ただし、この症状が繰り返された結果、後述するヘルニア嵌頓(かんとん)に症状が進行すると、腫れがひどくなり強い腹痛が起こります。, 膨れた部分がカチカチに堅くなり、手で押しても元に戻らないときは早急に病院を受診しましょう。, 通常、まずは視診及び触診を行い、鼠径部の膨らみと脱腸が確認できれば鼠径ヘルニアと診断されます。, エコー検査で別の疾患の可能性を除外し、何の臓器が飛び出ているかを確認する場合もあります。ただし、腹膜鞘状突起自体をエコーでみることはできないため、無症状のときにエコー検査を行っても何も確認できないことも多くあります。, 子どもの鼠径ヘルニアを発見した親御さんは慌てて病院に来られることが多いのですが、鼠径ヘルニアであっても、膨らんでいる部分が柔らかければ問題はありません。小児の鼠径ヘルニアは生後6か月までに自然治癒する可能性があるからです。, 6か月以前にみつかった場合、重症化(後述するヘルニア嵌頓)しない限りは我々小児外科が手で整復を施すのみにとどめ、しばらくの間は経過観察となります。なお先に述べた陰嚢水腫や精索水腫、ヌック管水腫の場合はさらに経過観察期間が長く、6歳前後まで様子をみるケースもあります。, 6か月経過しても腹膜鞘状突起の穴が自然に封鎖されない場合は、手術を行う必要があります。, 鼠径ヘルニア手術は非常にポピュラーな手術で、本邦における16歳未満の小児の全手術数46,000件のうち、鼠径ヘルニア手術は2万件近くを占めています。ですから、小児外科手術は鼠径ヘルニア手術が中心といっても過言ではありません。, 現在のところ、このうち5,000例程度が低侵襲で傷跡の残らない腹腔鏡下手術で行われているといわれています。, (小児鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術治療については『鼠径ヘルニア(脱腸)が内視鏡手術で完治する?「単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術」の開発』をご参照ください), 鼠径部が膨らんでいるだけの状態であれば特別な治療は必要ありませんが、鼠径部が赤く腫れてカチカチに堅くなってきた場合はヘルニア嵌頓の恐れがあります。この場合はすぐに医師の診察が必要です。, ヘルニア嵌頓(腸が腹壁の隙間から脱出し、もとに戻らなくなった状態)